9000人の遺体埋めた? 「集団墓地」に〝証拠隠滅〟 ロシア軍による虐殺急増、戦争犯罪は8000件近く 「旧ソ連と同様の道へ」識者

ロシアによるウクライナ侵攻での残虐行為が続々と明らかになっている。南東部の要衝マリウポリでは、ロシア軍が証拠隠滅のためにつくったとみられる「集団墓地」が確認され、民間人など数千人が埋められた可能性が指摘される。「9000人」との見方もある。ウクライナ当局が現時点で捜査している「戦争犯罪」は、民間人殺害や拷問、性的暴行など「8000件近く」に上る。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナ侵攻を「崇高」と主張しているが、国際社会の厳しい視線からは逃れられない。

【衛星写真】左右に通る道路沿いに、新たに集団墓地とみられる多数の穴が確認された

「何十万人もの人々の生命が危険にさらされている」

国連のアントニオ・グテレス事務総長は26日、ロシアの首都モスクワでプーチン氏とセルゲイ・ラブロフ外相と会談する。これに先立ち、グテレス氏は19日、「復活祭(イースター、24日)」に合わせた人道的停戦を、こう訴えていた。

欧州連合(EU)のシャルル・ミシェル大統領も22日、プーチン氏と電話会談を行った。ミシェル氏は停戦に向けて、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との直接協議を呼びかけた。

多方面からプーチン氏への説得が続けられるが、ロシアによる侵攻と、鬼畜なまでの残虐行為は止まらない。

米宇宙技術企業マクサー・テクノロジーズは21日に衛星画像を公表し、ロシア軍がマリウポリ近郊に「集団墓地」をつくったと分析した。市内から西に約20キロ離れたマングシュ村の衛星写真には、道路沿いの空き地に大きな溝が掘られ、少しずつ拡大している様子が写っていた。3日時点で、溝は1つの長さが85メートルほどで計4つある。

マリウポリ市議会は「ロシア軍に殺害された民間人3000~9000人の遺体が埋まっている可能性がある」と主張する。アンドリュシェンコ市長顧問はSNSで、ロシア軍が遺体を市内の大型冷蔵庫がある複数の施設に収容し、ポリ袋に入れたうえで、トラックで集団墓地に運びこんでいると投稿した。

ヴァディム・ボイチェンコ市長も21日、SNSで「ロシアの部隊が軍隊による犯罪を隠すために、殺害された民間人を埋めている」と非難した。

ウクライナのイリーナ・ベネディクトワ検事総長は22日までに、英スカイニューズ・テレビのインタビューに応じ、現在捜査している戦争犯罪が「8000件近く」に上ることを明らかにした。12日に米CNNの取材に応じた際は「5800件」としており、急増していることになる。

ロシア軍による、民間人の虐殺や拷問、性的暴行はあらかじめ計画されていたとみられ、戦争犯罪には即決処刑や子供のロシアへの強制移送が含まれる。ベネディクトワ氏は「最高司令官による戦略だ」と強調し、プーチン氏を非難した。

ウクライナ軍や内務省系「アゾフ大隊」の兵士に加え、子供や女性を含む民間人約1000人が避難しているとされる、マリウポリの地下要塞「アゾフスタリ製鉄所」に対しても、ロシア軍による激しい攻撃が行われた。ウクライナ側は、地下貫通弾(バンカーバスター)による無差別攻撃が行われたと主張している。

プーチン氏はウクライナ侵攻を「崇高な目的をすべて達成する」などと表明している。だが、ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊のブチャで発生した虐殺以上の暴挙が、マリウポリで繰り広げられている可能性がある。

ロシアの「戦争犯罪」をどうみるか。

福井県立大学の島田洋一教授は「ロシアは戦争犯罪が次々に暴露されているが、『民間人を避難させないウクライナの責任だ』と主張しており、もはや開き直りをみせている。ただ、ロシア軍による虐殺や拷問、略奪、性的暴行などが明らかになればなるほど、西側諸国の態度は強硬になる。旧ソ連がアフガン侵攻をきっかけに崩壊に向かったように、ロシアも同じ道をたどるだろう」と指摘した。

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